こんにちは、ショウヘイです。
長江俊和さんの著書「東京二十三区女 (幻冬舎文庫)」を読みました。
「渋谷区の女」の私なりの考察です。
その前の「板橋区の女」の私なりの考察はこちらです。
長江俊和さん。
この東京二十三区女は、長江俊和さんが書いています。
長江俊和さんといえば、放送禁止シリーズで有名な方です。
放送禁止シリーズは、フジテレビの深夜に放送されていたドキュメンタリーに見えるドラマです。
とある理由で放送できなかったドキュメンタリー映像を、フジテレビの倉庫の中から見つけてきて、それを放映するという設定のドラマです。
放送禁止シリーズの面白いところは、ドキュメンタリーの映像を別の視点から見ると、まったく違う事実が浮かび上がるというもの。
私は、そんな放送禁止シリーズなど、長江俊和さんの作品が大好きです。
そんな放送禁止シリーズを手がけた長江俊和さんは、小説も書いていて「出版禁止」「出版禁止 死刑囚の歌」「掲載禁止」などがあります。
東京二十三区女 渋谷区の女の考察。
ここから、東京二十三区女 渋谷区の女の考察に入ります。
これより、ネタバレになりますので、見たくない人は気をつけてください。
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文庫版ページと、私が気になった事柄や思ったこと。
P75 渠(きょ)は、人工の水路のこと。暗渠(あんきょ)は、ふたをした水路。工藤肇の話。時代はいつか?
P77 観音橋…凛々子の話。「4年後に開催される東京オリンピック」とあるので、2016年。観音橋交差点は、オリンピックスタジアムの西側の外苑西通り。
P79 仙寿院は、外苑西通り観音橋交差点の南。
P80 千駄ヶ谷トンネルは、仙寿院交差点から西。
P83 凛々子は外苑西通りを右に曲がるが、おそらく特定非営利活動法人シブヤ大学とジャガーのショールームの間の道を南西に入っていったと思われる。
P84 原宿橋は、渋谷区神宮前3-29に石柱が残っている。ここを南に進むとキャットストリート。
P87 凛々子に降りかかっている、『ある大きな問題』とは何か?
P88 参道橋は、渋谷区神宮前5-10に石柱が残っている。キャットストリート。
P91 穏田橋(おんでんばし)は、渋谷区神宮前17-4に石柱が残っている。
P93 渋谷川暗渠。渋谷川に蓋をして、今は道路になっている。
P95 隠田の水車。
P96 肇にメールを送ったのは誰か。
P96 宮益橋は、渋谷区渋谷1-24近辺。宮益坂の通りに面する、宮下公園駐輪場がある辺り。
P97 肇の母は川が好きだった。
P99 稲荷橋は、渋谷区渋谷3-20近辺。現在は、稲荷橋の周辺は稲荷橋広場となっていて、事務所や店舗が入る渋谷ストリームの一部となっているようです。
P100 肇のいる時代は、2009年。2009年は、まだ渋谷ストリームや稲荷橋広場がないので、稲荷橋の近くから暗渠に入れるようだ。ちなみに、凛々子のいる時代は、P77の「4年後に開催される東京オリンピック」とあるので、2016年。
P103 暗渠内のゴム製のカーテンは、どんな意味があるのか。
P104 肇が暗渠内で会った男は誰か。男が言う「カスミさん」は誰か。
P106 唱歌「春の小川」。
P114 「先輩は全然間違っています」と凛々子。何が間違っているのか。
P116 「カスミさん」は、肇の母の工藤カスミのこと。
P117 男の名は、日向。精神科医。
P120 カスミが失踪したのは、1999年頃。
P122 カスミは春の小川の舞台、河骨川近くで暮らしていた。カスミは春の小川を肇によく歌ってくれた。
P125 肇にメールを送ったのは日向。
P129 宇田川は、渋谷川の支流で暗渠化されている。宇田川町という地名に名残が残っている。
P130 肇が朦朧とし、意識がなくなったのはなぜか。
P135 凛々子が助けたいと思っている、「ある人」とは誰か。
P137 「川のせせらぎの音」から、肇の話。
P138 P103の暗渠内のゴム製のカーテンは、硫化水素などのガスが流れ出ないようにするためのもの。
P139 肇は、結束バンドで固く縛られ、身動きができない状態。
P140 肇がカスミを殺したのか。なぜ、日向は肇に「カスミを殺したのは君だ」と迫ったのか。このあたりから話が混沌とする。
P145 日向が肇に問いかける「本当のこと」とは。
P146 事実は、肇が義父を殺したのであって、カスミではない。カスミは、肇の身代わりになり、逮捕された。
P148 肇は、刑期を終えたカスミを拒んだ。
P151 暗渠の奥から、「彼女」が現れる。
P153 凛々子が探し求めているものは、恐ろしい恨み、怨念。
私の考察。
この渋谷区の女は、板橋区の女のような、時代を行ったり来たりすることがほとんどなく、また謎を解明するものでもなく、わりとすんなり入ってくる話だったと思います。
実際にある渋谷川の暗渠を、地図を見ながら、どのように凛々子が移動してきたのかを確認しつつ、読み進めると面白いですね。
渋谷ストリームができて、稲荷橋広場ができたというのもあって、渋谷川暗渠の入口は、凛々子のいる2016年とは微妙に環境の変化があったりして、この変化を見るのもまた興味深いですね。
話の後半で、肇と日向の話の内容が二転三転して、ちょっと混乱させられます。
しかし、最終的にはあの結論となり、「彼女」が現れるわけです。
わざわざ「彼女」の横に点がついている(「圏点」という名称らしい)のは、「彼女」という部分を強調しないと、彼女と思えないほど、人間の様相、風貌ではなかったからではないかと思います。
この「彼女」の念は、恨みや呪いとかじゃなく、妄執。
板橋区の女とは違って、幽霊とかおばけとか人智を超えたものが出てくるのではなく、生きている人間の話なのですよね。
凛々子的には、空振りなのかもしれません。
凛々子の目的が、まだはっきりとはわからないのですが、読み進めていけば、わかることなのでしょう、おそらく。
…と、私は解釈しました。
「あなたには”真実”が見えましたか?」
以上、「長江俊和さんの著書 東京二十三区女(幻冬舎文庫)の渋谷区の女 考察(ネタバレ注意)」でした。