こんにちは、ショウヘイです。
長江俊和さんの著書「掲載禁止 (新潮文庫)」を読みました。
その中の「掲載禁止」について、その考察です。
この話は、混乱します。
ネタバレがあるので、注意してください。
掲載禁止とは。
この掲載禁止は、長江俊和さんが書いています。
長江俊和さんといえば、放送禁止シリーズで有名な方です
放送禁止シリーズは、フジテレビの深夜に放送されていたフェイクドキュメンタリー(ドキュメンタリーに見えるドラマ)です。
とある理由で放送できなかったドキュメンタリー映像を、フジテレビの倉庫の中から見つけてきて、それを放映するという設定のドラマ。
放送禁止シリーズの面白いところは、ドキュメンタリーの映像を別の視点から見ると、まったく違う事実が浮かび上がるというものです。
そして、この掲載禁止。
掲載禁止の原罪SHOWとマンションサイコと杜の囚人については、記事を書きました。
掲載禁止 掲載禁止の考察。
ここから、掲載禁止 掲載禁止の考察に入ります。
これより、ネタバレになりますので、見たくない人は気をつけてください。
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文庫版ページと、私が気になった事柄や思ったこと。
P211 掲載禁止…この本の書名であり、この物語の題名。なぜ掲載禁止なのか?
P212 丘直子は助手席に座っている。
P212 彼女が、セダンを運転している男性に声をかけた。
P213 運転しているのは、タナカ(仮名)という人物。
P213 助手席から直子は、タナカの様子を取り続ける。
P213 落ち着いた声で語りかける彼女は、髪は肩までで、小柄でほっそり。
P214 バックミラーに映る彼女。
P216 彼女が、タナカの背に声をかける。
P221 親とご先祖様を大切にしろよと、タナカ。
P221 今度は彼女が、タナカに声をかける。
P222 タナカは直子の方をちらりと見た。彼女は質問を続ける。
P223 品格を守る会の代表、タナカ。
P224 品格を守る会は、通称品格会と呼ばれ、公序良俗に反する行為に鉄槌を下している。
P226 品格を守る会の代表は元日本兵だというネット上の書き込み。
P226 ラバウルは、ニューブリテン島の東端の都市。
太平洋戦争時、日本軍が占領した。日本軍の占領後は堅固な要塞を築き、終戦時まで日本軍が保持することとなった。
P226 タナカは、主宰者が元日本兵であることを否定。元日本兵だとすると、今は老人である。
P229 そう言うと彼女は、丁寧に頭を下げた。カメラを下ろして、直子は録画を停止させる。
P239 彼女もタナカの横に並ぶ。
P240 直子は後ろから、ショルダーバッグをタナカに向けた。彼女は質問を続ける。
P243 直子はバランスを崩し、ポールを握る。その前に、彼女は腰掛けている。
P243 彼女は慌てて立ち上がる。直子もすぐに後を追った。
P245 ドアの間から、タナカと彼女が飛び降りた。すんでの所で、なんとかホームへと降り立つ直子。
P247 直子はイヤホンをつけ、運転しているタナカにカメラを向けた。それと同時に、彼女が声をかける。
P250 敷島の大和心を人問はば、朝日に匂ふ山桜花。 本居宣長の歌。
この歌から、神風特攻隊の最初の4部隊は「敷島隊、大和隊、朝日隊、山桜隊」と名付けられた。
ただ、本居宣長記念館によると、この歌は、一般論としての大和心を述べたのではなく、宣長自身の心を述べているとのこと。
日本人である私の心とは、朝日に照り輝く山桜の美しさを知る、その麗しさに感動する、そのような心です。
P251 (タナカは)バックミラーに視線を送る。伺いを立てるような口調で、彼女に訊いた。
P251 タナカは、品格を守る会の代表を装って、演技をしていた。
P253 タナカは、映像関連の会社の経営者。多額の負債を抱えていた。
P255 タナカは、会社を畳んで、自己破産するつもりだった。
P259 タナカの事務所のエレベータの定員は5名。直子も乗ると、身動きがとれないほど窮屈。
P260 タナカは彼女にソファに座るよう促す。直子は立ったまま。
P261 彼女はタナカを見上げた。
P262 彼女は立ち上がり…。
P263 直子が、カメラをタナカに向けて、言った。「カメラ、回りました」
P264 二つの異様な物体は、縛られた人間。
P265 タナカが豹変し、縛られた人間を粛清する。
P266 直子の口から、とっさに言葉が出た。「どういうつもりなの」「開けなさい」「開けてよ」「開けてって、言ってるでしょう」
P267 髪留めが外れ、一本に束ねていた直子の長い髪。
P267 部屋の隅にもう一つ小さなドア。
P269 縛られた人間の一人は、茶髪の若者。もう一人は、白髪の老人。
P272 タナカは、もう一つ小さなドアの向こうで、若者を亡き者にした。
P273 武士の情けには、切腹する人の首をはねる役目の介錯人によって、切腹する人の苦しむ時間を少しでも短くさせるという意味を含んでいる。
P275 タナカいわく、老人は浮浪者。日本の品格が乱れるので、タナカは粛清するのだと言う。
P277 老人の前に、粛清すべきは、歪んだ正義を振りかざし、ジャーナリズムという凶器を使い、弱者をいじめる者、つまり彼女のようなマスコミの人間。
P278 直子からカメラを奪い、彼女にカメラを向けるタナカ。
P281 茶髪の若者が連れて行かれたドアの方へ、タナカは彼女を連れて行く。
P283 亡くなった若者を、確認する彼女。
P284 タナカは、手をかけようとした彼女を逃がそうとする。
P284 タナカは、品格を守る会の主宰者ではなく、縛られている老人が主宰者だと言う。
P285 タナカは、品格を守る会は、彼女をはめたと言う。
P287 タナカが逃げない理由は。
P288 品格を守る会の主宰者により、逃げた者は日本中どこに行っても、居場所を突き止められ、連れ戻される。
P289 タナカは二人で逃げることを拒む。
P289 刀を持った白髪の老人。
P290 タナカは、倒産詐欺の常習犯。
P291 タナカは、品格を守る会の裏切り者。
P291 「*」の意味。
P292 「お見事でした。代表」まで、彼女はカメラで撮影した。
P293 老人も、代表ではない。仕込み。
P294 最後に登場した、丘直子。ここで、???となる人は多いはず。
P296 ここまでが、文芸雑誌に送られてきた記述の全文。その後、その記述を裏付けるような動画が流出。文芸雑誌は、社会的影響を考慮し、掲載を取りやめた(掲載禁止)。
P298 背が高く恰幅のいい女性が、丘直子本人。
P298 直子「私は、カメラで撮っていただけ。この醜悪な男に髪を鷲づかみにされた」
P298 直子が呼びかけた彼女は、尚子(しょうこ)という名前であり、丘直子ではない。また、<>の部分が尚子の言葉。
P299 尚子の言葉により、直子が代表であることがわかる。
P299 最後に、代表である直子が、本居宣長の歌「敷島の大和心を人問はば、朝日に匂ふ山桜花」 を言う。
私の考察。
この物語は、P294の、ドアの向こうから丘直子が登場した時点で、読者はポカーンとなりますね。
で、タナカに追い詰められていた、彼女は丘直子じゃないの?となりますよね。
この物語で表現されていた、「直子」と「彼女」は別人で、彼女は尚子のことです。
つまり、最初に、タナカの車に乗り込んでいたのは、タナカと直子と尚子の三人。
直子は助手席に、尚子は後部座席に座っていたようで、P214にバックミラーに映る彼女(尚子)という場面がありました。
もちろん、駅を歩くシーンも三人で行動していて、P240ではタナカの横に並び質問を続けている彼女に対し、直子は後ろからショルダーバッグに仕込んだカメラをタナカに向けて撮影をしていました。
直子と彼女の行動の齟齬がところどころにあり、読み直すと、三人で行動していたことがハッキリとわかります。
直子はカメラ担当で、尚子はインタビュー担当であるため、ほとんど尚子がしゃべています。
タナカは、品格を守る会の主宰者は白髪の老人だと思っていて、老人に尚子をはめるよう指示されていました。
タナカは、品格を守る会のやり方に耐えかね、警察に摘発してもらおうと、尚子に警察に行くよう逃がそうとした。
タナカが逃げようとしない理由は、タナカにより老人を引き止めておいて、その間に尚子が通報した警察に踏み込んでもらうためだと思います。
が、尚子もまた品格を守る会の中の人であった。
結局、裏切り者の烙印が押されたタナカは老人に寄って、粛清されてしまう。
P291の「*」から後は、誰かを装う人はおらず、本当の人物像、人間関係が描かれているということだと思います。
なので、直子は主宰者であり、老人は主宰者ではなく協力者(会員?)であり、尚子は直子の部下。
となると、この物語に登場する人物は、ほぼ品格を守る会の中の人だけの話で、その中のタナカの裏切りを見極めるための話だったわけです。
疑問は残ります。
いったい誰が、文芸雑誌にこの記述をリークし、動画が流出させたのか。
品格を守る会がどれくらいの規模の団体なのかはわかりませんが、その中の誰か裏切り者が動画を見つけ、告発したということなのかもしれません。
文芸雑誌の出版社は、これらの記述の掲載を禁止し警察に届けたようで、警察は関係者の行方を追っている。
この点については、原罪SHOWでテレビ局のIプロデューサーが警察に通報しなかったという対応に比べると、だいぶマシだなと思いました。
Be good to your folks.
この掲載禁止の本の表紙、上部にかかれている英文。
Be good to your folks.
グーグル翻訳で表示される意味は、「あなたの人に善良になりなさい」。
意味がいまいちよくわからなくて、もう少し意訳を試みます。
Be good to…は、~に親切にする、優しくするなどの意味があります。
floksは、ある特定のグループを意味します。
家族だったり団体だったり、floksは、そういった人の集合体を意味するようです。
「貴方の家族(団体)に親切にしなさい」、という感じの意味でしょうか。
ただ、この文章が、いまいち、この掲載禁止のどの物語にも、あんまりしっくりこないんですよね。
何か意図がある文章ではあると思うのですが、私は英語が得意じゃないので、これについては意味がよくわかりませんでした。
「あなたには”真実”が見えましたか?」
以上、「長江俊和さんの著書 掲載禁止(新潮文庫)の掲載禁止考察(ネタバレ注意)」でした。