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長江俊和さんの著書「出版禁止(新潮文庫)」の紹介と考察(ネタバレ注意)。

こんにちは、ショウヘイです。

長江俊和さんの著書「出版禁止 (新潮文庫)」を読みました。

出版禁止 (新潮文庫)

以前に、出版禁止はすでに読んだんですが、この度読んだのは、新潮文庫版です。

どんな話なのか、思い出しながら読みました。

その謎解きとか考察です。

出版禁止と放送禁止。

この出版禁止は、長江俊和さんが書いています。

長江俊和さんといえば、放送禁止シリーズで有名な方です。

放送禁止 DVD封印BOX

放送禁止シリーズは、フジテレビの深夜に放送されていたドキュメンタリーに見えるドラマです。

とある理由で放送できなかったドキュメンタリー映像を、フジテレビの倉庫の中から見つけてきて、それを放映するという設定のドラマです。

放送禁止シリーズの面白いところは、ドキュメンタリーの映像を別の視点から見ると、まったく違う事実が浮かび上がるというもの。

私は、そんな放送禁止シリーズなど、長江俊和さんの作品が大好きです。

そんな放送禁止シリーズを手がけた長江俊和さんの著作が、出版禁止ということです。

出版禁止の考察。

ここから、出版禁止の考察に入ります。

これより、ネタバレになりますので、見たくない人は気をつけてください。

文庫版ページと、私が気になった事柄や思ったこと。

P16 2004年の事件、専門学校生の住所が「Y市」とあるが、おそらく八潮市だと思われる。

P22 筆者の本名が「□□」となっているが、この「しかくしかく」というのが、後々ポイントとなる。

P23 筆者と待ち合わせをした女性は、珈琲専門店を指定して待ち合わせをしたくせに、なぜかレモンティーを注文。

P26 女性が7年前(2002年)の事件と関わっていることがわかる。

P33 女性の名前は「新藤七緒(しんどうななお)」であるが、これは筆者がつけた仮名である。この「しんどうななお」という仮名は、事件のポイント。

P34 「熊切敏(くまきりさとし)心中事件」が、P26の2002年の事件のことである。熊切は、ドキュメンタリー作家。

P35 熊切心中事件の現場が、山梨県O町の貸別荘。しかし、山梨県にOで始まる名前の町は存在しないようだ。忍野(おしの)は、忍野村。

P36 熊切制作のドキュメンタリー映画代表作「死槌(しづち)」。この物語の内容とは、あんまり関係ないか。

P37 熊切の妻が、「永津佐和子(ながつさわこ)」で、この人はこの物語のキーパーソン。しかし、物語の中にあまり登場しない。

P38 「森角啓二(もりかくけいじ)」は、熊切エンタープライズのプロデューサー。熊切敏心中事件の第一発見者である。

P41 熊切の遺書。この文中に、「私は見たい。人の心の中が。」とあり、これは、心中を見たいということを言っているのか。また、世界を「セカイ」と表記したのは、何か意図があるのかないのか、よくわからない。

P42 Mプロデューサーは、森角。

P42 メディア評論家の唐沢悟(からさわさとる)は架空の人物。実在の、東京喰種に携わった唐沢悟(からさわさとし)さんとは、たぶん関係ない。しかし、東京喰種という作品と、この出版禁止の内容が、微妙にリンクする部分があったりする。

P44 熊切の作品は、世界の大企業を批判した「死槌」、大物政治家を批判した「日出ずる国の遺言」、腐敗した警察機構を批判した「INU」。

P56 七緒とのインタビュー。七緒には夢があった。この時は内緒にしていたが、これは後々明らかになる。

P58 熊切の人間的欠陥があり、これも後々明らかに。七緒の夢とともに、この物語の真相のキーポイント

P73 霧筑波(きりつくば)は、茨城の地酒。

茨城県 浦里酒造 霧筑波(きりつくば) 特別純米 火入れ 720ml

P75 心中事件の判例として引用されている和歌山県の事件。この事件は実在の事件である。

最高裁昭和33年11月21日第二小法廷判決

P80 大物政治家K、すなわち「神湯堯(かみゆたかし)」が、熊切敏を殺害したのではという疑惑。この神湯堯が、おそらく出版禁止の中で、一番のキーパーソン。ただし、話の中には出てくるものの、登場して何かするわけではない。人物像が謎に包まれている。神湯という名前から、カミュという異名がある。ちなみに、カミュといえば、ノーベル文学賞を受賞したアルベール・カミュが有名だけれども、神湯と何か関連があるのか、私はよくわからなかった。

アルベール・カミュ - Wikipedia

P93 神湯が熊切を殺害することはありえない。これは、後に理由がわかる。

P100 熊切敏心中事件の現場の部屋には、プロデューサーの森角が一人で入った。森角も、非常に怪しく思えるが…。

P111 熊切の死の直前、ビデオカメラの前で、熊切は今から死ぬということを言っていた。これは、熊切のみで、七緒は言っていない。

P114 警察は心中と判断したわけだが、上からの圧力が働いて、捜査が打ち切られたのかもしれない。

P121 神湯の妄信的なシンパの中には、武闘派がいる。

P122 その武闘派の中には、刺客もいる。刺客は「しかく」。しかくは、P22と関連。神湯のシンパが送り込む刺客を「カミュの刺客」と呼ぶ。このカミュの刺客は、誰に雇われ、何のためにその対象者に対して任務を遂行するのか、知らされない。

P130 熊切の右腕だった森角。神湯について尋ねられると、表情が曇る。神湯が熊切を殺害することはありえないと言う。

P143 新藤七緒の本名を「××××」としている。×が4つ。何か意味があるのか。

P151 神湯を信奉する秘密結社の代表である高橋から、熊切は、神湯の息子だと知らされる。そのため、神湯が熊切を殺害することはありえない、というのは腑に落ちる。

P152 高橋に、自分自身の役割と使命は何か、よく考えろと言われる。そして、「視覚の死角が、喫緊の課題」が喫緊の課題と言われる。「しかくのしかく」、ここでまた「しかく」という言葉が出てくる。重要ポイント。

P159 七緒と待ち合わせは、鹿島臨海鉄道大洗鹿島線のS駅。調べてみると、S駅は、新鉾田駅だと確定。

P161 七緒の住む、茨城県H市は、すなわち鉾田市。

P179 七緒とのインタビューの中で、熊切の死の直前に撮影されたビデオテープを持っていることを告白。このビデオテープは、熊切の妻である長津佐和子は受取を拒否した。

P195 七緒は、女優を目指していた。これが、P56で内緒にしていた七緒の夢。

P196 女優を目指していた七緒は、永津佐和子の付き人をしていた。その伝手で、熊切エンタープライズに入る。

P199 「心の中は、一切目に見えない物」、これを少し変化させると「心の中は、死角」、もっと言うと「心中は、刺客」???

P199 「人は死を以て、契を守り通そうとした」、これも変化させると、「人の死で、約束を守った」ということ、すなわち「刺客の使命を果たした」ということ??

P200 「あなたも見たくありませんか?目には決して見えない、人の心の中を」、これも変化させると「あなたも見たくありませんか?刺客の心中を」???

→→→ここから、ルポルタージュの草稿。

P206 これまでの中に、漢字の変換ミスがあったのが、判明する。これは、「しかく」のことだろう。また、心中事件の見当違いの推察と、自分の役割の誤解も、判明する。

P209 七緒の目は三白眼であるということが、何度が出てくる。過去に、三白眼は犯罪者の特徴と言われていたこともあったが、科学的に否定されている。人相学的には凶相で、のめり込むストーカー気質と言われている。話とは関係ないだろうけど…。

P223 七緒の父は、経営していた工場を倒産させてしまった。その際、援助したのが永津佐和子。七緒は、長津佐和子に対して恩がある。返報性の原理か、そのため七緒は永津佐和子の役に立ちたかったのではないか。七緒は、「恩人を裏切ってしまった」と言っているが、これは長津佐和子の夫である熊切を奪い取ったことを言っているのか、それとも…?

P225 永津佐和子は、夫である熊切とはうまくいっていなかった。熊切から執拗な暴力を受けていたらしい。P58の熊切の人間的欠陥とは、このことのようだ。そのため、永津は離婚を望んでいたらしい。つまり、熊切をどうにかしたいと思う気持ちは、永津佐和子にもあったということ。

P226 熊切心中事件を取材するきっかけとなった知人とは、いったい誰なのか?

P228 「…し…て…して」「…が、い…て、…」と、七緒は何かを伝えいようとしていた。

P229 P229の後半、文頭をつなげると「私は、七緒をころした」となる。長江さんの解説、P307参照。

P231 曾根崎心中の説明。熊切心中事件と関連性があるのかないのか。たぶん、関係ないかな。

曾根崎心中・冥途の飛脚 他五篇 (岩波文庫)

曽根崎心中 - Wikipedia

P234 太宰治は心中事件を繰り返していたが、実は心中するつもりはなくて、死生観を作品に投影させるために心中の真似事をしていたのではないかと言われている。この考え方は、熊切心中事件の核心なのかもしれない。

人間失格

太宰治 - Wikipedia

P242 ルポルタージュの題名を「カミュの刺客」とつけた。カミュの刺客は、七緒のことではない。

P243 「カミュの刺客」の筆者は、自分のことを「若橋呉成(わかはしくれなり)」という筆名をつけた。ここで、「新藤七緒」という仮名も付けた。名付けの理由は、後で。

P243 P243の中ほど、文頭を読むと、「七緒は生首」となる。長江さんの解説、P326参照。この後から、七緒について、顔の描写だけになる。

P243 若橋は、夕食の材料を買うため、スーパーに行く。野菜しか購入していない模様。

P244 夕食の鍋の描写。一体何を食べたのか?これも、長江さんの解説、P327参照。

P245 若橋がバッグを持ち歩く描写。バッグの中には、七緒。P325参照。

P251 「七緒の心が見えない」と言うが、もう胴はないのだから、ねぇ…。

P253 七緒が訴えようとしたこと(P228)を、若橋が知るところとなる。しかし、この時点では、まだはっきり書かれていない。

P259 「おねがい…はやく、はやく…ころして」とあるが、これがP228の、七緒が訴えたかったこと!?

P270 若橋の自問自答インタビュー。「熊切の心中について知りすぎた」とあるが、心中の真相は…。

P277 七緒のインタビューを試みるが、もちろん七緒は喋れる状態じゃないので、これも若橋の自問自答みたいなものか。「たった一つだけ、確かめなければならないこと」は、何か。

P279 熊切は死ぬつもりはなかった。P234の太宰治の例。おそらく、熊切心中事件の核心。つまり、それをうまく利用されて、熊切は殺されたということか。

P284 七緒は刺客だが、神湯の刺客ではなかった。神湯は、熊切の親だから。七緒は神湯の刺客ではなく、永津佐和子の刺客だった。P225で、永津佐和子は、熊切から執拗な暴力を受けていた事実が判明し、これは熊切を始末する十分な動機である。

P289 七緒に、熊切を本当に愛していたのかという質問に対し、「それは今、あなた自身が解明したことではないですか?」と返される。これは、つまりP277からのインタビュー内の話が事実で、それを若橋が解明したということか。そして、七緒の目的は刺客なので、おそらく熊切を愛していなかったのではないか?

P290 最後の質問。七緒は若橋を愛していたのか?これが、P277の「たった一つだけ、確かめなければならないこと」か?

→→→ここまでが、ルポルタージュすべて。

→→→ここから、それ以後のこと。

P295 ルポライターの男、精神鑑定。ルポライターとは、もちろん若橋のこと。精神鑑定をするくらいのことをした。まあ、七緒を生首にしてしまったのだから。

→→→ここから、長江さんによる「カミュの刺客」出版にあたって

P302 勾留中の若橋が、首をつって遺体となって発見された。警察は自殺と断定したが…本当に自殺なのか?警察の中に、また別の刺客がいるのか?そういえば、熊切の作品の中に、腐敗した警察機構を批判した「INU」というのがあるが…。

P302 自殺と断定されたので、裁判は開かれず、審理も終了。報道もほとんどされなかった。これは、報道に対する圧力がかかったのか?神湯の圧力?

P315 七緒の手紙。若橋に対する思いが書かれている。P290の、七緒に対する最後の質問「七緒は若橋を愛していたのか」の答えではないだろうか。

P331 若橋と七緒の事件の年末に、永津佐和子が交通事故で死亡。飲酒による居眠り運転と警察は断定したが…。これは、誰かのしわざじゃないだろうか?これも、神湯の刺客がやったこと?

P334 勾留中に書かれた、若橋の最後の手記に「どうやら私は、カミュの刺客としては失格だったようだ」 とあり、若橋が刺客であることを告白。最後に、「わかはしくれなり」と、ご丁寧に名前が平仮名で書かれているが、これはアナグラムになっていて、「われはしかくなり我は刺客なり)」となる。ちなみに、「新藤七緒しんどうななお)」もアナグラムになっていて、「どうなしおんな胴無し女)」となる。

→→→ここから、文庫版で追加された箇所。

P335 若橋は「カミュの刺客」をなんのために書いたのか、七尾に対してなぜあのような処置をしたのか等の答えが、若橋の手記の「生還することなど、もはや不可能」の「生還」にある。生還するために、それらのことをした、と。

私の考える「出版禁止」の焦点。

表の話:熊切敏心中事件で生き残った新藤七緒。実は、熊切の命を奪うため、熊切の妻である永津佐和子によって放たれた刺客だった。そんな新藤七緒を取材した若橋呉成なのだが、七緒に惚れ込んでしまい、熊切の時と同じように心中を図ってしまう。

裏の話:若橋は、大物政治家の神湯堯が放った刺客だった。つまり、若橋は、刺客である七緒を仕留めるための、刺客の刺客であった。神湯が七緒に対する刺客を送った理由は、神湯の実の息子である熊切の仇討ちのため。若橋は七緒と心中を図ったが、自分は生還するつもりでいた…。一応、若橋の任務は遂行されたが、生還できなかった。

…まぁ、こんな感じでしょうか。

うーん、読み込みがまだ浅いかなとも思います。

このままだと、文庫版のあとがきで長江さんが指摘していた、「生還することなど、もはや不可能」の部分がイマイチ反映されていない…。

私なりに、もっと推察してみると…

神湯が放った刺客は、世間のあらゆるところにいるのではないか。

永津佐和子を交通事故死に見せかけたのも、若橋が勾留中に首をくくったのも、神湯の刺客の仕業。

刺客の刺客が、若橋に対しても別に存在して、若橋をも仕留めようとしていた。

「生還することなど、もはや不可能」という手記を若橋が残したのは、これは自分が刺客によってやられることを察知していたのではないか。

刺客が刺客によってやられてしまうのは、刺客の運命みたいなものではないか。

若橋は、七緒を殺害し、首以外を鍋にした。

すでに亡くなっている七緒と話したりしている。

若橋は心中も図った。

これは、もはや若橋は正気ではない…というフリをして、「あいつはもはや廃人だから、新たな刺客を放って、手をくだす必要がない」と思わせて、なんとか生還するつもりだったのではないか。

しかし、警察の中にも刺客がいて、首吊り自殺に見せかけて殺害された。

こんな奇異な事件が起こったのに、報道がほとんどされなかったのは、神湯の圧力があったから。

警察も、捜査はそこそこに終えてしまったが、これも神湯の圧力。

神湯の刺客と圧力が、この世を支配している…ということを知り、若橋は警察に捕まり、廃人のフリをして、裁判で神湯の悪行をぶちまけようとしていたのかもしれない。

が、世の中の様々なところに、神湯の息がかかっていて、自分ひとりではどうにもできない。

となると、もしかしたら、そのことに失望して若橋は、本当に自分で首をつったのかもしれない。

若橋の七緒に対する思いは、多少なりともあったんじゃないかと、ちょっと思いたいところだけれど、七緒に対する処置が酷すぎるから、それはやっぱり無いかな…。

…もちろん、 これが真相なのかはわからないですし、邪推に過ぎないのかもしれない。

いろいろなことを考えてしまって、まとまらない文章になってしまいました。

出版禁止 (新潮文庫)」については、私としては、推理しながら読めてとても楽しめました。

私は、気になったところに付箋を貼りながら、メモしながら、読んでました。

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もし、出版禁止の第2弾があれば、ぜひ読んでみたいと思います。

あなたには”真実”が見えましたか?

以上、「長江俊和さんの著書 出版禁止(新潮文庫)の紹介と考察(ネタバレ注意)」でした。

出版禁止 (新潮文庫)

出版禁止 (新潮文庫)

 

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